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抗 議 声 明


本日(11月11日)、田尻賢一さん(福岡拘置所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。

 これで安倍晋三内閣は第一次で10人、第二、三次で17名、合計27名という近年では最多の死刑を執行したことになる。金田勝年法務大臣は法相就任3ヵ月で死刑の執行を行った。執行された田尻賢一さんの記録を精査することもなく、慎重な検討をせずに死刑を執行したことは明白である。
 一昨年3月、袴田巌さんは冤罪の可能性が高いとして再審開始が決定されるとともに、これ以上拘置し続けることは著しく正義に反す
るとして釈放され、今年8月にも無期懲役で服役していた東住吉事件の二人が再審無罪になるなど、誤判があることは国民の常識になっている
ことからも、死刑執行命令を出すことは避けるべきであった。

 田尻賢一さんは、2011年10月熊本地裁の裁判員裁判で死刑判決を受け、12年4月には福岡高裁で控訴棄却・死刑判決を受ける。控訴審判決までわずか6ヵ月である。そしてその5ヵ月後、上告を自ら取り下げ、死刑を確定させている。死刑事件では必要的
(自動)上訴制度の導入を行い、三審での裁判を受ける権利を保障すべきにもかかわらず、十分な審理を経ることなく執行されたのである。
 また田尻さんは、一件については自首し、自分の犯した事件について深く反省していた。自らの罪を悔悟した人間の死刑を執行することにど
んな意味もない。

 10月7日、日本弁護士連合会は「2020年までに死刑制度の廃止を目指し、終身刑の導入を検討する」とする宣言を採択した
が、今回の執行は、この宣言に対する死刑制度を堅持するという回答である。そのために人の命を奪うという赦されざる決断を法相は行ったの
である。
 金田法務大臣は、すでに世界の70%の国と地域が死刑を廃止していることに目を向け、また死刑に誤判が不可避であることを理解し、
さらに先の世論調査で終身刑を導入すれば死刑を廃止してもよいとする意見が40%近くに及んでいることを踏まえ、死刑執行を停止し
て、広く社会に向かって死刑廃止に向けた議論を開始すべきであったのである。

 私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、金田法務大臣に処刑された田尻賢一さんに代わり、そして、死刑執行という苦役
を課せられている拘置所の職員に代わって、金田法務大臣に対し、強く、強く抗議する。

2016年11月11日